致死量未満の殺人

 

致死量未満の殺人

致死量未満の殺人

 

 第3回アガサ・クリスティー賞の受賞作。

雪に閉ざされた山荘で弥生という女性が殺害された。そのときともに滞在していた4人のゼミ仲間にはそれぞれ殺害する動機があった。しかし結局警察の捜査では犯人は特定できず、事件は迷宮入りとなった。それから15年後、事件の当事者のひとりである龍太はおなじく当事者である花帆のもとで事件について語りはじめる。「弥生を殺したのは俺だよ」と。

選評では文章を批判している選者も居ましたが、個人的は読みやすい部類の文章でした。ただトリックはなあ。死因は毒殺であると言うことで、どのようにして毒を仕込んだのか、飲ませたのかと言うことが焦点となるわけなのですが、古典的であるが故に想定されるパターン自体もある程度限られていて、今回提示されるトリック自体が斬新かというとちょっと疑問ではあります。そのせいか全体の構成を複雑にしてどんでん返しをしかけていますが、それはそれで迫力はあるのですが、そのような構成自体も先行作がないではないのでなんともかんとも。そうして浮かび上がる真相も雪の山荘での毒殺という陰惨な事件の割になんというかそんなアホなって言う現実感のないものに見えてしまいました。

次回作に期待、ですかね?

ヒーローショー

 

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 元になった事件がどうしようもない救いのない事件だったこともあって、なんともの悲しいどうにもならない映画ですね。

主人公側の暴力に至る展開が丁寧に描かれている上に、被害者側がどうにもならんないクズとして描写されていることから多少は同情する面もないではないのですが、さすがにあれほどのバイオレンスはなかなか共感に至るものではありませんでした。

バイオレンスとは関係なさそうなお笑いコンビを使ってこれほどの映画を作り上げたのは確かに凄いのですが、やっぱり勇気のほうは自衛隊あがりの伝説の不良には見えないような。元の事件の実行犯は一見温厚だがなにをするかわからないところがあったとのことなので、そういう面を反映したのでしょうかね。

ダーティハリー

 

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 随分ひさしぶりにみました。

この作品は大量にフォロワーを生み出した関係で実際にオリジナルを見直してみると、「あれ?こんなんだったっけ?」となる不思議な作品ですね。

当時は過激なバイオレンスが話題となった映画だったそうなんですが、今見るとだいぶおとなしいですね。サソリとおなじモデルを使った映画だとみんな血みどろですものね。

今まではテレビとかで吹き替えを見ていてあんまり意識していなかったのですが、今見ると字幕は違和感ありますね。「半黒だ」とか全然意味わからないですよ。

その男、凶暴につき

 

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 これもレンタル100円で。

北野監督のバイオレンス系統の作品は結構見ているのですが、それらとこれを比較するとどういうものを描きたいのか、どういうものを描く必要が無いと考えているのかと言うのがなんとなくわかる気がします。

本作品では我妻と言う箍の外れた刑事と、清弘と言う狂ったヤクザの対決がストーリーの縦軸となっているのですが、清弘にしても作中で言及されるような殺しが大好きな狂人にはあまり見えませんし、そもそも二人の対決は常に微妙にすれ違っています。のちのHANA-BIがほぼおなじストーリーと言っても過言では無いような中で、清弘にあたる存在がすっぽり抜け落ちていることから「男同士の対決」のようなものにはあまり興味が無いのかもしれません。

東京の下町の細い道路をダラダラと追い続ける追跡シーンや、クライマックスの射殺シーンなど今見ても衝撃的な映像が多々あることに驚きです。リアルタイムで見られた人は幸せでしょうね。

しんぼる

 

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 こっちはスカパーでみたのかな。

既にさや侍まではみているのですが、これが一番つらかった。

主人公がどこかに閉じ込められてわけがわからないまま脱出を試みるというシチュエーションはホラーとかサスペンスによくあるものですが、そういうものに多用されるのは結局殺されそうとか一生でられないかもしれないという恐怖が緊張感を持続させてくれるわけで、そうでないとしたら画面の変化も乏しい限定シチュエーションはどうしても退屈になってしまうように思います。

前作の大日本人にしても同様だったのですが、緊張感を持続させる仕掛けとかテンポとかを重視しないためか、とにかくだらだらと長く感じる映画でした。最初の部屋から脱出して次の部屋へ移動する廊下を走るシーンとか、ラストの昇天シーンとかどうでもいいところが妙に長いんですよねえ。flashの脱出ゲームみたいなコントをえんえん何分も見せられても別に面白くもないしだるいだけです。脱出のための扉を開ける仕掛けとかもなんどやってもペナルティもないし、時間切れで落ちてくる戸に挟まれても妙なポーズで痛がるだけでダメージもないと言うことで、無敵モードのゲームを見ているようなもので酷く退屈でした。

脱出コントじゃないほうのメキシコパートは変なシーンがあまりないのでそこまで不快ではなかったのですが、別に面白いわけでもないのがなんとも。

松本監督ゲームとか見てこういうのが普通の人にはうけるのか?と思ったのかなあ。ゲームは自分が操作しているから楽しめるという面も多大にあるわけで、単純にゲームみたいな画面を映画で再現したらとんでもないことになっちゃったような。

 

前作と比較すると、大日本人はテレビでみたらそんなに残念なおもいはしないかなと思う内容だったけど、こっちはテレビで見てもがっくりくるかも。

大日本人

 

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 ここ最近ツタヤで100円旧作見る週間。

噂であらすじとか評判とか聞いてはいたので、心の準備をしてみていたのではありますが、それでもやっぱりきびしいものがありますね。

フェイクドキュメンタリーのような演出ではじまるのですが、そういう形式でつくられている理由もその形式に必要な演出も欠けていて、見ていてこれはどういうことなんだろうという疑問が常にストーリーとは別に発生していて実際の尺以上に長く感じられて辛かった。

大日本人はかつては大人気だったが、今は廃れて、テレビ放送も深夜枠・・・と言うことなのですが、それであれば獣との戦いのシーンは深夜番組、と言うかプロレス中継風にするべきではなかったのだろうか。少なくともテレビ番組のように番組タイトルとかだしておくべきではなかったかなあ。

特に評判の悪いラストの小芝居も、映画の中の番組における予算が尽きてCGではなくなったのかそれとも映画「大日本人」自体の予算が尽きてああなったという演出なのかも曖昧でいずれにしてもそれにつながるような展開もないわけで、唐突すぎる印象があります。

あらすじだけ見ると凄くおもしろそうだったんだけどなあ。