致死量未満の殺人

 

致死量未満の殺人

致死量未満の殺人

 

 第3回アガサ・クリスティー賞の受賞作。

雪に閉ざされた山荘で弥生という女性が殺害された。そのときともに滞在していた4人のゼミ仲間にはそれぞれ殺害する動機があった。しかし結局警察の捜査では犯人は特定できず、事件は迷宮入りとなった。それから15年後、事件の当事者のひとりである龍太はおなじく当事者である花帆のもとで事件について語りはじめる。「弥生を殺したのは俺だよ」と。

選評では文章を批判している選者も居ましたが、個人的は読みやすい部類の文章でした。ただトリックはなあ。死因は毒殺であると言うことで、どのようにして毒を仕込んだのか、飲ませたのかと言うことが焦点となるわけなのですが、古典的であるが故に想定されるパターン自体もある程度限られていて、今回提示されるトリック自体が斬新かというとちょっと疑問ではあります。そのせいか全体の構成を複雑にしてどんでん返しをしかけていますが、それはそれで迫力はあるのですが、そのような構成自体も先行作がないではないのでなんともかんとも。そうして浮かび上がる真相も雪の山荘での毒殺という陰惨な事件の割になんというかそんなアホなって言う現実感のないものに見えてしまいました。

次回作に期待、ですかね?