七つの海を照らす星

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七つの海を照らす星 (創元推理文庫)
 

 次作のアルバトロスは羽ばたかないで大きく注目された七河迦南の第一作。

七海学園という養護施設の職員・北沢春菜が遭遇する様々な謎。連作短編の形式で春菜が遭遇する謎を時には福祉司である海王の手を借りて解決するストーリー。

今は亡き星の光も

連作の冒頭と言うことで自己紹介的な比較的おとなしい作品。こういうトリックで行きますよと言う挨拶みたいなもんですかね。

滅びの指輪

条件は説明されているので作中の条件としては可能なのでしょうが、現実として可能なのでしょうか。

・・・と思いましたが、細部は違いますが現実にこういう事件があったような気がします。

血文字の短冊

このトリックはどうなんだw

ミステリ小説というのは驚きがないといけないと思うし、そのためにはある程度の飛躍というか無茶は必要だとは思いますが、結構シリアスな話が続く中にこういうトリックを仕掛けてくる度胸というか気合いには脱帽です。

夏期転住

ここまで来るとある程度の傾向は読めていたので、ある程度は読めてきましたが、細かいあたりのトリックはわからなかった・・・と言うかしらなかったので作中で説明されるまでわかりませんでした。

裏庭

これはどうなんだろう。そもそも問題となった状況を見かけて不思議におもったりするもんなんですかね?

ああいうのって代々伝わっていってたりするもんじゃないかなあ。

暗闇の天使

素直にミスリードに引っかかっていたからじゃあないですが、これは第2話同様の飛躍トリックじゃないですかね。のちの作品を見る限り作者の味のようですが。

七つの海を照らす星

さて、連作短編の最終作としていままでの作品中で出てきた謎を一気にまとめ上げて驚きの結末に導きます。ここまで読んで、あー、そういう趣向だったのかあと素直に感嘆しました。結構強烈な脱力トリックとかもあるのでひとつひとつの短編としてみるとどうなんだろうと思うものもあるのですが、感動作になってるからまあいいかと思うのに加えて、構成として一つ前の短編に出てくるサブのトリックが次の作品のメイントリックのヒントになっている・・・と言うような形となっているため、アンフェア感はあまり感じませんでした。さて、次は話題作の「アルバトロスは羽ばたかない」。

楽しみです。

ヨハネスブルグの天使たち

 

ヨハネスブルグの天使たち (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

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帯でポスト虐殺器官みたいな煽りが入っていたせいで先入観あったのだろうとは思いますが、なんか期待したのと違ったなあと言う印象の本でした。

初音ミク湾岸戦争に行ったゲームボーイグローバル化する紛争とかそういう今風の要素を組み合わせているように見えるのですが、それぞれの要素がイマイチ魅力的じゃなくて、もうちょっとサービスしてくれよという風に感じてしまいました。

連作短編なんですが、おもしろかったのは表題作ですかね。ラストの選択を強いられるのならば戦争でもしてたほうがマシなんじゃねえかとはおもいますが。

キッズリターン

 

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 あの事件のあと、復帰第一作目ということになるわけなんですね。

今となってはあまり実感はないのですが、北野監督作品はコメディはいまひとつ失敗していて、バイオレンス作品は批評家の評価は高いものの、日本映画ファンはあまりバイオレンス作品が好きではないということもあって、興行収入的には苦戦していたそうです。

そういう事情もあって、北野武本人の出演なし、バイオレンスは控えめ、その割にコメディでもないと北野作品としては特異な立ち位置にある作品と言えます。

図らずもボクシングの才能があったためにボクサーの道を進むシンジと、普通で居られないがためにヤクザの道へと進むマサル。どちらも才能故に頭角を現しますが、それぞれの世界のよどみに足をとられて挫折してしまいます。そして伝説となった有名なラストシーンへ繋がる。

この映画自体がいろんなしがらみから生まれた制約だらけの映画のはずなのですが、新人二人を主演に立てての迫力あるボクシングシーンなど過激なバイオレンスを封印した故のおもしろさが出ているかと思います。

CSの北野武劇場でみたので、リバイバルのメイキングみたいなのがあとにあったのですが、主演の一人である金子賢が20年近くたって、登場してなんとなく映画の役と重なるような人生の紆余曲折と、今の風貌が重なって興味深かったですね。

あと当時はホモソーシャル的な盛り上がりがあったとのことなんですがそうなんでしょうか。北野作品に女が出てこないなんて当時でももうわかってそうなもんですが。

 

 

致死量未満の殺人

 

致死量未満の殺人

致死量未満の殺人

 

 第3回アガサ・クリスティー賞の受賞作。

雪に閉ざされた山荘で弥生という女性が殺害された。そのときともに滞在していた4人のゼミ仲間にはそれぞれ殺害する動機があった。しかし結局警察の捜査では犯人は特定できず、事件は迷宮入りとなった。それから15年後、事件の当事者のひとりである龍太はおなじく当事者である花帆のもとで事件について語りはじめる。「弥生を殺したのは俺だよ」と。

選評では文章を批判している選者も居ましたが、個人的は読みやすい部類の文章でした。ただトリックはなあ。死因は毒殺であると言うことで、どのようにして毒を仕込んだのか、飲ませたのかと言うことが焦点となるわけなのですが、古典的であるが故に想定されるパターン自体もある程度限られていて、今回提示されるトリック自体が斬新かというとちょっと疑問ではあります。そのせいか全体の構成を複雑にしてどんでん返しをしかけていますが、それはそれで迫力はあるのですが、そのような構成自体も先行作がないではないのでなんともかんとも。そうして浮かび上がる真相も雪の山荘での毒殺という陰惨な事件の割になんというかそんなアホなって言う現実感のないものに見えてしまいました。

次回作に期待、ですかね?

ヒーローショー

 

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 元になった事件がどうしようもない救いのない事件だったこともあって、なんともの悲しいどうにもならない映画ですね。

主人公側の暴力に至る展開が丁寧に描かれている上に、被害者側がどうにもならんないクズとして描写されていることから多少は同情する面もないではないのですが、さすがにあれほどのバイオレンスはなかなか共感に至るものではありませんでした。

バイオレンスとは関係なさそうなお笑いコンビを使ってこれほどの映画を作り上げたのは確かに凄いのですが、やっぱり勇気のほうは自衛隊あがりの伝説の不良には見えないような。元の事件の実行犯は一見温厚だがなにをするかわからないところがあったとのことなので、そういう面を反映したのでしょうかね。

ダーティハリー

 

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 随分ひさしぶりにみました。

この作品は大量にフォロワーを生み出した関係で実際にオリジナルを見直してみると、「あれ?こんなんだったっけ?」となる不思議な作品ですね。

当時は過激なバイオレンスが話題となった映画だったそうなんですが、今見るとだいぶおとなしいですね。サソリとおなじモデルを使った映画だとみんな血みどろですものね。

今まではテレビとかで吹き替えを見ていてあんまり意識していなかったのですが、今見ると字幕は違和感ありますね。「半黒だ」とか全然意味わからないですよ。

その男、凶暴につき

 

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 これもレンタル100円で。

北野監督のバイオレンス系統の作品は結構見ているのですが、それらとこれを比較するとどういうものを描きたいのか、どういうものを描く必要が無いと考えているのかと言うのがなんとなくわかる気がします。

本作品では我妻と言う箍の外れた刑事と、清弘と言う狂ったヤクザの対決がストーリーの縦軸となっているのですが、清弘にしても作中で言及されるような殺しが大好きな狂人にはあまり見えませんし、そもそも二人の対決は常に微妙にすれ違っています。のちのHANA-BIがほぼおなじストーリーと言っても過言では無いような中で、清弘にあたる存在がすっぽり抜け落ちていることから「男同士の対決」のようなものにはあまり興味が無いのかもしれません。

東京の下町の細い道路をダラダラと追い続ける追跡シーンや、クライマックスの射殺シーンなど今見ても衝撃的な映像が多々あることに驚きです。リアルタイムで見られた人は幸せでしょうね。